IPO(新規公開株)銘柄への投資を考えている初心者の方も多いと思いますが、今回はデータ検証することによって、本当に儲かる投資手法なのかを踏み込んで検証してみたいと思います。
検証結果からIPO銘柄の特徴や傾向もいくつか見えてきましたので、その内容についてもお話ししていきます。
【検証対象】
2017年3月~2018年2月に上場したIPO銘柄(地方市場やリートを除く84銘柄)
【検証するデータ】
公募価格、初値、高値と安値(上場後1年間)、それぞれの日付
※私が手集計で検証したデータのため間違いがあるかもしれません。
※あくまでも参考値としてご覧ください。
今回とは別の切り口で、私の過去の失敗事例に基づいて解説している記事もありますので、よかったらそちらも参照してみてください。
IPO投資に対する検証
まずはIPO投資に対する検証を行いたいと思いますが、その前にIPO投資についておさらいしておきましょう。
IPO(新規公開株)銘柄を公募価格で取得し、上場後の初値で売却して利益を得る手法のこと。銘柄への期待値が高ければ、初値で売却せずさらに高値を狙うことも可能です。
対象銘柄の検証結果は以下の通りです。
対象銘柄のIPO投資データ
今回の検証対象である84銘柄全体のIPO投資データは以下の通りとなりました。
- 84銘柄の値上がり率平均:217.6%
- 初値が公募価格を下回った銘柄:8銘柄(9.5%)
- 公募価格を下回った銘柄の平均下落率:▲4.1%
公募価格で取得できた場合は、平均で2倍以上の値上がりが期待でき、公募価格を下回る可能性は10%以下で、その場合の下落率は4%程度となっています。
やはり公募価格⇒初値売りのIPO投資は、検証結果からしても儲かる確率がかなり高い投資手法であることがわかります。
公募に当選することが一番難しいのですが、当選するとほとんどの銘柄で利益を出せる可能性が高いので、公募には積極的に申込みをしていきましょう。
公募価格⇒初値 値上がり率TOP5
検証対象84銘柄のうち、公募価格から初値の上昇率が高かった、TOP5の銘柄は以下の通りです。
コード | 銘柄名 | 上昇率 | |
---|---|---|---|
1. | 3997 | トレードワークス | 618.2% |
2. | 3991 | ウォンテッドリー | 501.0% |
3. | 3986 | ビーブレイクシステムズ | 461.1% |
4. | 9264 | ポエック | 437.3% |
5. | 4380 | Mマート | 433.9% |
TOP5の銘柄すべてが公募価格の4倍以上となっており、公募に当選した投資家は初値で売却しても大きな利益を得る結果となりました。
これらの銘柄のチャートも確認してみましょう。
【3997 トレードワークス】
【3991 ウォンテッドリー】
【3986 ビーブレイクシステムズ】
【9264 ポエック】
【4380 Mマート】
TOP5のうち3つが上場直後に高値を打ち、その後はほぼ右肩下がりに安値を更新し続ける「上場ゴール」銘柄でした。
また他の2つも上場後しばらくして大きく下落する局面を迎えていますので、公募価格の4倍をつけるような銘柄は、初値売りが良策となるようです。
逆にセカンダリ―投資の観点から見ると、公募価格の4倍以上をつけるような銘柄の場合は、値がついてもすぐに買い向かうことはせずに、過熱感が冷めて下落局面を狙うべきといえるでしょう。
セカンダリー投資に対する検証
公募に当選できなかった場合など、上場後にセカンダリー投資で挑むとどのようになるのでしょうか。
IPO(新規公開株)銘柄を上場後の証券市場で購入して投資する手法のこと。IPO銘柄の上場直後は市場の評価が定まっていないため、値動きが激しく大きな利益を得る可能性もありますが、投資判断を見誤ると取り返しがつかない大きな損失となるリスクもあります。
対象84銘柄のセカンダリー投資に対する検証結果は以下の通りです。
上場ゴール銘柄の割合
上場後1ヶ月内の高値を今現在でも更新できておらず、なおかつ現在値が公募価格割れとなっている上場ゴール銘柄のデータは以下の通りです。
- 上場ゴールに該当する銘柄:15銘柄(17.9%)
- 上記15銘柄の初値⇒現在値下落率平均:▲53.2%
- 上記15銘柄の高値⇒現在値下落率平均:▲64.2%
上場した銘柄のうち18%は上場ゴール銘柄であり、上場直後の過熱感のある時期に掴んでしまうと、大きな損失を抱える結果となっています。
上場直後にどの銘柄が上場ゴールなのかを判定することは難しいので、上場後の決算発表と相場環境を見ながら、セカンダリー投資のタイミングを見計らうのが良策といえそうです。
上場1年内安値の投資データ
IPO銘柄が上場後1年内につける安値を検証した結果は以下の通りです。
- 84銘柄の公募価格⇒安値の値上がり率平均:137.7%
- 安値が公募価格を下回った銘柄:31銘柄(36.9%)
- 上記31銘柄の安値⇒現在値上昇率:+22.8%
- 84銘柄の安値⇒現在値上昇率:+42.8%
初値では平均2倍以上になるIPO銘柄も、その後平均138%程度まで下落する局面があり、そのうち安値が公募価格を下回る銘柄が全体の37%にも達することが分かりました。
公募比125%くらいで拾えるものまでを含めると全体の57%を占めるまでとなり、下落局面まで待てばかなりの銘柄が公募付近で買える可能性があるということが分かりました。
ただ安値が公募割れするまで下がる銘柄は、そこから現在値の上昇率も+23%程度と全体の平均値より低いので、投資妙味は薄いものとなる可能性が高いです。
1年内安値⇒現在値 値上がり率TOP5
検証対象84銘柄のうち、上場1年内安値から現在値の上昇率が高かった、TOP5の銘柄は以下の通りです。
コード | 銘柄名 | 上昇率 | |
---|---|---|---|
1. | 6544 | ジャパンエレベーターサービスホールディングス | 1003.7% |
2. | 3990 | UUUM | 381.1% |
3. | 3983 | オロ | 351.6% |
4. | 6548 | 旅工房 | 273.6% |
5. | 3479 | ティーケーピー | 256.3% |
※現在値は2019年3月4日終値
TOP1の銘柄は安値から10倍以上となっておりダントツの結果です。わずかの期間でテンバガーを達成したスター銘柄といえるでしょう。
しかし上場前の評判が高かったわけではなく、どちらかというと地味な扱いだったのですが、業績の伸びを評価されて徐々に人気になり10倍化するまでになりました。
TOP5銘柄のチャートも確認してみましょう。
【6544 ジャパンエレベーターサービスホールディングス】
【3990 UUUM】
【3983 オロ】
【6548 旅工房】
【3479 ティーケーピー】
どの銘柄にも共通するのがあまり人気が無い状態から、業績の伸びが評価されてじわじわと買われだし、そのうち人気に火がつくパターンです。
このような銘柄を探り当てるには、やはり銘柄の業績チェックが必須となります。
別の記事で業績チェックに関して解説をしていますので、よかったらそちらも参照してみてください。
IPO銘柄の上場後1年以内の値動きパターン
ここまでの検証を行う中で、IPO銘柄の上場後1年以内の値動きはある程度パターン化していることが分かりました。
それらのパターンをまとめてみます。
上場ゴール
上場直後に過熱感から高値をつけますが、人気の剥落とともに徐々に値を下げだし、決算発表で業績の低迷が明らかとなり、さらに値を下げ続けるパターンです。
公募で持っていたりセカンダリーで上場直後に参入してしまった場合は、出来高の減少とともに値が下がる動きを見たら、ある程度のところで一度離脱して様子を見るべきかもしれません。
塩漬けにしたりナンピン買いするは避けましょう。
株価が徐々に成長
上場時はそれほど人気が無かった銘柄が、その後の決算で業績の伸びを評価されるなどして徐々に人気化し、株価も右肩上がりの推移を描くパターンです。
このパターンの場合は業績が安定している間は、人気が人気を呼んで株価が大きく成長する可能性があります。
相場の大暴落時などを狙って購入すれば、セカンダリーでも十分に投資妙味があります。
相場の暴落と購入タイミングの判定については、別の記事で解説をしていますので、よかったら参照してみてください。
過熱感が冷めてから再上昇
上場時は人気があったにもかかわらず、業績の悪化などに連動して株価もいったん低迷してしまうものの、業績のV字回復などによって再上昇していくパターンです。
業績の成長が継続して見込めるのであれば、上場時の人気が高かった銘柄ほど株価も大きく上昇する可能性がありますので、セカンダリー投資でもチャンスがあります。
ヨコヨコ
初値が高すぎて業績好調でも株価があまり上がらずに高止まりしているか、人気もなく業績もイマイチという銘柄で見られるパターンです。
前者の場合は業績が軟調になると一気に下落する場合がありますので注意が必要です。
人気が無くヨコヨコになっている場合は、業績がよくなることで株価上昇期に入ることがあります。
まとめ
今回はIPO銘柄の上場後1年間の値動きを検証し、投資する場合の注意点やヒントを考察してみました。
まとめると以下の通りとなります。
- 公募当選すれば高い確率で利益が見込める
- 上場時の評価が低くても大化けする銘柄もある
- 損失のリスクはあまりないので、どの銘柄でも積極的に公募への応募はするべき
- 上場時の人気が高く株価が高騰している銘柄へのセカンダリー投資は避けたほうがよい
- 人気が無く放置されている銘柄でも大化け候補は眠っている
- 4つのパターンから注意点とヒントを考察する
個人的な見解としては、IPO投資は当選さえすれば初心者の方でも利益が出しやすい投資手法だと思います。
しかしセカンダリー投資は値動きが激しくリスクもあるので、初心者の方が固執するべき投資手法ではないと感じます。
自身のビジネス視点で銘柄選定を行う中で、IPO銘柄に投資を検討する場合はお話しした注意点などを考慮して、慎重に購入時期を見極めることをおすすめします。
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